1. かかりつけ医(大分オレンジドクター)の役割

 

 こんにちは。私は佐伯市の小さな診療所で開業医をしている井上と申します。

  皆さんは「かかりつけ医」をお持ちですか?

 おそらく近くに、持病を診てもらったり、風邪や体調が気になるときに相談したりするお医者さんがおられるのではないでしょうか? そんな身近なお医者さんが、認知症の対応をしていただけると助かりますよね。

 ただ、私を含めて今開業している中高年の医師は残念ながら大学であまり認知症について学ぶ機会がなかったのです

 (率直に告白します)。

 何故かというと、30年前や40年前は今のように高齢化が進んでいなかったので、認知症自体があまり大きな問題となって

 おらず、関心も持たれていなかったためだと思います。
 その後日本の高齢化は急速に進み、2000年の介護保険法施行以後、我々医師も介護保険制度に関わる中で認知症に対する

 知識や実践が求められています。

 私も特別養護老人ホームの嘱託医を引き受けたり、認知症サポート医の研修を受講したりするなかで、「かかりつけ医が

 認知症に関わっていくことが大事」だと感じるようになり、いろんな場に参加させていただくようになりました。
 その中で最初に感じたのは、医療介護に関わる多くの職種の方達との連携の重要性です。

 医師という職種は、ややもすると他の方達から敷居の高い存在と見られがちですが、多職種におけるオープンでフラットな

 関係性はとても大事です。

 医療介護に関わるいろんな皆さんと地域で一緒に認知症に関わっていくことにより、認知症を持つ患者さんへより質の高い

 対応が出来るようになりました。
 

 認知症のなかで主な原因となるアルツハイマー型認知症ですが、その特徴はゆっくりと進行すると言うことです。

 専門医でも1回の診察で診断することは難しいとされていますが、継続して診療しているかかりつけ医だからこそ、

 その変化に気づきやすいと言えます。


 また、認知症の最大の危険因子は「加齢」と言われています。

 私自身も高齢者の1人として、診療の場や地域交流の場で認知症となられた人生の先輩の声を聞きながら、地域で患者さんに

 寄りそう医療を続けることが、かかりつけ医としての役割だと思っています。

2. 多職種連携の実践

 認知症の人の生活地域を考えたときには、介護支援専門員、包括支援センター、かかりつけ医など専門性の高い職種がキーパーソンになることが考えられますが、一つの専門職だけで暮らしを支えることはできません。
 そこで、異なる専門性を持ったひとたちが集まり、共有した目標に向けて活動することが必要になります。それを多職種連携といいます

 地域でも病院でも介護施設でも認知症の人とその家族の暮らしは、多くの人、様々な人々、職種によって支えられます。どれだけ病院で具合が良くなっても、施設で元気でも、住み慣れた場所で、その人と支える人たちが心地よく暮らすことができなければなりません。
 地域での暮らしを支える人たちには、医療介護の専門職だけでなく、地域の民生委員さんや自治委員さんたちを始めとした、地域で暮らす人々、そして民間企業の方々も含まれます。
 多職種で連携することは、以下のようないくつかのメリットがあります。

~多職種連携のメリット~

① 治療・ケアの質の向上

 各々の専門職、地域の人たちがそれぞれの視点で認知症の人の状態を把握、情報を共有することにより、切れ目のないその人に応じたケアや治療が提供され、質の向上、効率化に繋がる。

② 本人家族の安心感

 関係多職種で情報を共有することにより、まとまりのある対応が取れることになり、それが本人及び家族の安心感、ひいては専門職への信頼感に繋がる。

③ 専門職の成長

 多職種で相互にコミュニケーションを取り合うことで、他の職種の視点や知識を学ぶことができ、新たな気づきから個々の成長に繋がる。

相互の情報共有が多職種連携のキーポイントの一つです。
 職種が違えばとらえ方が違い、アプローチの方法も異なります。その点を理解した上で、お互いを尊重する気持を忘れずに個々のスキルを高めながら、本人、支援者を含めて円滑なコミュニケーションをとり、暮らしを支えていきましょう。情報の共有には、可能であればICT(通信技術を用いたコミュニケーション)などを利用してもよいでしょう。
 そして、支援の中心には本人がいることを忘れないでください。本人の視点を含めたコミュニケーションが、本当の支援に繋がることとなるでしょう。
 また、大分県には認知症の各々の地域で専門職のネットワーク、認知症の人とその家族の会が活動しています。このサイトに情報が記載されていますので、ご興味をもたれた方は是非相互の情報共有、ご参加をご検討ください。

3.大分県内の専門職のネットワーク

1)大分認知症カンファレンス

 2010年に設立された大分認知症カンファレンスは、認知症の人の暮らしを支えるために、医療、福祉、介護などの専門職が職種の垣根を超えフラットな関係で、認知症の予防・診断治療・ケア・地域連携に関する学習や事例検討を行う集まりです。
 現在、企画・運営に携わる世話人は、60人を超え大分県全域に広がっています。その時々の認知症医療・ケア課題をテーマに年2回開催され、多職種による活発な意見交換が行われています。大分認知症カンファレンスは、大分県内の複数の認知症ネットワークと連携しながら拡大した経緯があり、2020年にはNPO法人となりさらに発展をしております。
 

2)地域の認知症ネットワーク

  • JUN(城東・上野ヶ丘・碩田認知症ネットワーク)

 平成24年に、城東、上野ヶ丘、碩田圏域の多職種の事業所が協力して、認知症の人やその家族の方々の支援を深く研鑚し、多職種連携の中でより充実した支援を提供していく基礎としてJUN(城東・上野ヶ丘・碩田認知症ネットワーク)が設立されました。 認知症になっても住み慣れた地域で生活を継続する為、医療・介護や生活支援を行うサービスが有機的に連携したネットワークを形成し、認知症の方々への効果的な支援を行う事を目的に現在まで活動を継続しています。

【運営代表】佐藤病院 精神科医師 萩原聡
【連絡先】城東地域包括支援センター 認知症地域支援推進員 荒金理恵
     〒870-0907 大分市大津町2丁目1番41号大分県総合社会福祉会館
     TEL:097-558-6285  E-Mail:joto@oita-syakyo.jp

 

  • 東部地域症例検討会

 大分市東部の介護事業所や医療施設、関連機関等に声かけし、2012年1月から年に1回程度認知症にかかわる多職種の連携や認知症対応のスキルアップを目指しながら勉強会や症例検討会など行っています。専門職の方の講義やケアマネの支援困難事例の発表また高齢者虐待、グループワークを交えながら参加者も一緒に考えていけるような検討会を行っています。

【運営代表】 わかば台クリニック 院長 山内千代
【連絡先】 ヘルパーステーションばんぷく
     〒870-0271 大分市角子原1丁目13番37号
     TEL:535-8055 FAX:535-8056  E-Mail:banpuku@vesta.ocn.ne.jp

 

  • 城南賀来認知症ネットワーク

 2010年11月より、「城南・賀来地域包括支援センター」「井野辺病院地域医療連携室」「居宅介護支援センターからしま」が世話人となり会を運営しています。
 「地域の認知症の方が必要なサービスを適切に利用できる地域ネットワークづくり」を目指し取り組みを続けて来ました。城南・賀来圏域に住む認知症の方や認知症介護をする家族の方を支援していくために関係する職種の連携を深め、支援に必要な情報を得られる場となるよう企画・構成を検討しています。医師の講演や認知症に関する事業や取り組みの発表、事例検討、事業所紹介等の内容で年間3回程度開催しています。

【運営代表】 井野辺病院 院長 井野邉純一 辛島内科・消化器内科 院長 辛島卓
【連絡先】城南・賀来地域包括支援センター 松長望美
     〒870-0891 大分市荏隈町1丁目12番3号
     TEL:097-545-1030  E-Mail:jyounan-kaku@eco.ocn.ne.jp

     井野辺病院地域医療連携室 佐藤豊秀
     〒870-0862 大分市大字中尾字平255番地
     TEL:097-586-5597  E-Mail:koreha4@yahoo.co.jp

     居宅介護支援センターからしま 小野智美 
     〒870-0892 大分市賀来新川2丁目1番15号
     TEL:097-549-3331  E-Mail:soumu-karashima@amail.plala.or.jp

 

  • 南大分認知症でつながる会

 本会は、認知症ケアを通じて地域のネットワークづくりを進めることにより、認知症の人やその家族等が、慣れ親しんだ南大分地域で穏やかに暮らせるよう支援することを目的として、平成27年6月に設立されました。
 平成27年12月には、安心して暮らし続けられる町を地域住民の方々と一緒に作っていきたいと考え、「スマイルカフェ」をオープンしました。スマイルカフェは、認知症の方、そのご家族、地域住民の方、各専門家、認知症に関心のある方など、どなたでもご参加いただけます。お互いに交流したり情報交換することを目的にし、多くの方の集う場所として活動を続けています。

【運営代表】 大分共立病院 院長 岡真一郎
【連絡先】大分共立病院地域連携室 竹尾真由美、平川ひとみ
     〒870-0860 大分市明磧町1丁目2番9号
     TEL:097-543-1177 E-mail:hirakawa@kyouritsu-hosp.sakura.ne.jp

 

  • 戸次・吉野地域認知症ネットワーク

 平成27年戸次・吉野圏域の医療機関や介護事業所の多職種で運営委員会を発足。認知症の人や家族が住み慣れた地域でその人らしく過ごせるよう、圏域の多職種が、認知症についての知識や対応方法の研鑽の場として、また医療と介護の連携の場を目的として年3回研修会を開催をしていました。医師や歯科医師の参加もあり、多職種で意見交換してきました。令和2年からは新型コロナ感染拡大で回数が減ってはいますが、連携の場を絶やすことなく状況に応じて活動を継続しています。

【運営代表】 社会医療法人財団天心堂理事長 河村忠雄
【連絡先】戸次・吉野地域包括支援センター
     〒879-7761 大分市大字中戸次4577番地3
     TEL:097-586-7170  E-Mail:hetugiyosino-houkatu@festa.ocn.ne.jp

 

  • 臼杵市の認知症を考える会

 「臼杵市の認知症を考える会」の発足は2010年。医師会・大学・臼杵市が中心となり、医療、看護、介護、福祉の多職種の代表の参加のもとに設立しました。当時、認知症専門の医療機関が少なかった臼杵市において、大分大学医学部の協力を得て、医師会や介護サービス事業者、 行政が連携可能となりました。現在も、定期的に関係者が集まり、認知症を予防でき、『認知症になっても安心して暮らせる町づくり』を目標に積極的に事業を進めています。

【運営代表】藤野循環器内科医院 院長 藤野孝雄
【連絡先】臼杵市医師会地域包括支援センターコスモス 臼杵市の認知症を考える会 事務局 担当:小野未架
     〒875-0051 臼杵市大座戸室字長谷1131番地の1
     TEL:0972-63-6250  E-Mail:houkatsu@usukicosmos-med.or.jp

 

  • 由布市オレンジの会

 10年以上の長きにわたり由布市の認知症に関する活動を先進的に展開してきた「由布物忘れネットワーク」は、発足当初の目的を達成し、令和3年8月をもって活動を終了しました。
 「由布市オレンジの会」(由布市認知症地域活動支援ボランティア事業)は、平成29年に認知症の地域活動を行なう専門職の相互の連携をとり、「認知症の人と家族にやさしいまちづくり」を推進することを目的に発足したボランティアの会です。 由布物忘れネットワークの発展的解消により、今後は地域ボランティアの活動主体を由布市オレンジの会が継続し、職種、職域を超えた専門職の横のつながり、市民との協働による地域認知症ケアの底上げをめざすネットワークづくりをすすめています。

【運営代表】 由布市地域包括支援センター長 久澄千里 
【連絡先】由布市地域包括支援センター 認知症地域支援推進員 阿部泰代
     〒879-5434 由布市庄内町庄内原321番地4
     TEL:097-582-0106  E-Mail:yufu-orange@yufu-shakyo.jp

 

  • 別府認知症研究会

 平成17年に設立し、今年で16年目に当たります。昨年よりコロナ禍で、活動が制限されていますが、別府市の医療と介護領域の接点として、機能してきました。毎年2月と8月に、全国から名だたる認知症領域の先生を講師としてお招きして、日本の最先端の医学的、そして介護領域の知識を学習してきました。毎回、鶴見病院の講堂で、200名近くの会員にお集まりいただいています。
 講演に先立ち、現在自分たちの抱えている事例の発表や検討を重ねてきました。とかく医療と介護の接点の難しさが言われますが、別府市においてのお互い顔の見える関係を構築するする場として、機能しています。また「認知症の人と家族の会」の方々もお越しいただき、家族目線の貴重なお話をいただいています。これからも地域での認知症に対する包括的対応のために、活動してまいります。

【運営代表】 会長:吉福健二 副会長:安部第一医院 院長 安部明夫
【連絡先】安部第一医院
     〒874-0905 別府市上野口町3-40
     TEL:0977-23-3345 ホームページ:http://abedaiichi.jp/publics/index/9/

 

  • 大分認知症ケア事例研究会

 認知症については医学的にも未解決の分野であり、その介護、福祉のあり方についても未だ確立された方法論はなく試行錯誤の現状です。単にご利用者への直接サービスのみでなく経験や実践を科学的に観察、記録、集積、分析し介護方法の体系化を図ると同時にその技術を地域や関係機関に還元し、地域福祉、在宅福祉に役立てて行きたいとの考えから昭和62年に「大分認知症ケア研究会」が発足しました。
 認知症の介護技術の向上を図ると同時に、関係者、関係機関の横の連携を深めネットワークを確立し在宅介護をバックアップするシステムを作る目的でもあります。昭和62年より30年以上続いているこの事例研究会がこれからも地域包括ケアの一助になれば幸いです。

【運営代表】 社会福祉法人泰生会 理事長 雨宮洋子
【連絡先】総合ケアセンター泰生の里 別府 担当:荒金麻世
     〒879-0843 別府市大字鶴見字中山田1068番地の1
     TEL:0977-66-9988  E-Mail:btaisei@wellb.or.jp

 

  • おおいた西部地域認知症ネットワーク研究会

 2014年に西部(日田・玖珠・九重)地域を軸に活動する任意団体として、日本認知症ケア学会認知症ケア専門士を中心に発足しました。設立当初より、「認知症の人と家族が、地域で安心して生活ができる環境作り」を目指し、学術講演会や多職種間の連携に向けた事例検討会を主とし、自己研鑽の場が提供できるよう活動しています。
 2018年から、より充実した活動展開の為、大分県認知症疾患医療センター上野公園病院と共に活動をしています。

【運営代表】 医療法人百花会上野公園病院 院長 長野浩志
【連絡先】 医療法人百花会上野公園病院 代表世話人 羽野伸司
     〒877-0062 日田市大字高瀬字篠原2226-1 
     TEL:0973-22-7723  FAX:0973-22-7318  E-Mail:uenokoen-hp@giga.ocn.ne.jp

 

  • 中津市認知症ネットワーク研究会

 中津市認知症ネットワーク研修会は2011年に発足し、医療介護、福祉、司法等の専門職や関係者約20名で構成され、行政のバックアップも受けながら運営を行っています。
 目的は『中津市の医療職、介護職を含めた認知症地域連携及び認知症の方々・それに関わる市民教育の推進を目標とし、地域住民と一体となり、介護、医療従事者の育成、知識や実践強化を行う事で、増え続ける認知症の方々の診断、予防と治療、介護の進歩に貢献する』という事で頑張っています。

【運営代表】 会長:末廣医院 院長 末廣朋耒 筆頭世話人:ふるかわメディカルクリニック院長 古川信房
【連絡先】中津市地域包括支援センターいずみの園 伊藤保幸、川上央実
     〒871-0162 中津市大字永添2744
     TEL:0979-62-9000  E-Mail:y.itou@izuminosono.jp

3)大分県認知症ケア専門士会

 認知症ケア専門士は、認知症の人・家族に専門性の高いケアを提供する専門職として、日本認知症ケア学会が認定する資格です。大分県下には、400人を超える認知症ケア専門士が病院・施設・事業所等で活躍しています。
 大分県認知症ケア専門士会は、この資格をもつ専門職(介護職、介護支援専門員、看護職、社会福祉士、作業療法士、理学療法士、医師など)が集まり、認知症に関する知識やケア技術の向上を目的に年2~3回研修会を行っています。最新知識の講義、事例検討、実践報告など、専門士同志で活発な情報交換・意見交換が行われています。

【代表世話人】後藤剛司(やまなみ苑)
【連絡先】総合ケアセンター泰生の里内(担当:荒金)
     〒879-0843 別府市大字鶴見字中山田1068番地の1
     TEL:0977-66-9988  FAX:0977-66-9965  E-Mail:oita-senmonshi@wellb.or.jp