認知症ってどんな病気?

誰しも歳をとるにつれてもの忘れをするようになります。
しかし、加齢によるもの忘れと認知症は異なります。
加齢によるもの忘れと認知症のもの忘れはどうやって見分けるのでしょうか。

不思議に思っている人のイラスト

認知症によるもの忘れの特徴

  1. 最近の出来事(家族で出かけたこと、伝言を頼まれたこと、大切なものをしまったこと)をすっかり忘れてしまう。
  2. ヒントを出されても思い出せない。
  3. もの忘れのために料理、買い物、お金やお薬の管理などの日常生活が困難になる。
認知症の物忘れの例画像

認知症の原因となる病気はさまざまです。

主な病気として

があります。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症は、脳の細胞がゆっくりと減っていくため、症状もゆっくりと進みます。

アルツハイマー型認知症

病気の説明・原因

認知症の原因の4~5割がこの病気です。ゆっくりと進行する病気で、新しいことが覚えられない(記憶障害)、年月日がわからない(見当識障害)、買い物や料理ができない(実行機能障害)などが見られます。

アルツハイマー型認知症の原因

発症する10~20年前から『アミロイドβタンパク』と『リン酸化タウタンパク』という老廃物が脳内にゆっくりたまり、神経細胞が死んでいきます。

認知症脳イラスト画像

特徴・主な症状

  1. 忘れていることを他人に気付かれないように上手く『取り繕い』ます。
  2. 通帳や印鑑の置き場所を忘れてしまい、『誰かに盗まれた』と疑うこと(もの盗られ妄想)が見られることがあります。
アルツハイマーの症状イラスト画像
アルツハイマーの症状イラスト画像

レビー小体型認知症

病気の説明

『レビー小体』というのは、レビーさんがパーキンソン病の脳細胞で発見したものです。これが脳にたくさん見られる病気が『レビー小体型認知症』です。比較的よく見る認知症です。

特徴・主な症状

  • パーキンソン症状

『動きがにぶくなる』『手がふるえる』『こけやすくなる』

  • 幻視

人や動物が目の前にいるように見える。
例えば、『数人の男の人が居間に寝ている。呼びかけても何にも言わない』など

  • 症状の変動     

しっかりしているときと居眠りをするときの差がはげしい。  

  • 妄想

嫉妬妄想(旦那が幻視の女性と浮気をしている)他に『自分の家が別にもう一軒ある、家族が偽物にすり替わっている』など。

その他にみられる症状
  • 抑うつ症状

病気の早い時期はうつ病と診断されることがあります。

  • レム睡眠行動障害

夜中に悪い夢をみて、大声で怒鳴ったり、布団の中で暴れたりします。

  • 薬剤に対する過敏性

抗精神病薬に反応して全く動けなくなることがあります。

前頭側頭型認知症

病気の説明

65歳未満の若い年齢で発症することの多い認知症です。以前はピック病と呼ばれていました。

特徴・主な症状

もの忘れよりも、万引きなどの反社会的な行動や同じことを繰り返すといった特徴がみられます。

  • 毎日決まった時間に同じ道順で歩いたり、決まったものばかり食べる
  • 他人に共感したり感情移入ができなくなる
  • “わが道を行く”ような行動をとる(堂々と万引きする、他の人の食事を取る)
  • こだわりが強くなり、柔軟な考え方ができなくなる
  • ことばの意味が失われる「時計って何ですか?」

血管性認知症

病気の説明・原因

脳梗塞や脳出血など脳の血管障害によって起こる認知症です。

特徴・主な症状

  • 症状が突然出現したり、段階的に悪化したり、変動したりします。
  • 認知症だけでなく、脳が破壊された場所によって、半身不随、歩行障害、言葉が理解できない、感情のコントロールができないなどの随伴症状が早期からみられます。

検査

  • 頭部CTやMRIで、大きな梗塞があったり、小梗塞がたくさんあったり、大脳白質(脳の深い部分)に広範に血流が悪い変化があったり、前頭葉、側頭葉、視床、海馬など認知機能に重要な役割を持つところに梗塞があったりします。
認知症の症状脳のイラスト画像

治療

  • 脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、心疾患などを適切にコントロールするとともに、脳梗塞の再発予防のための薬剤が使われます。
  • リハビリテーションやレクリエーションなどの非薬物療法が認知症の症状や生活の質の改善に有効なことがあります。

認知症の検査ってどんなものがあるの?

対面での質問による検査

病院では、年齢、日付や場所、記憶力、計算、物の名前などを質問する検査が行われます。

時計の文字盤と指定された時刻の長針と短針を書き加えるという時計描画テストもあります。

時計描画テストのイラスト画像
画像検査

アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症では、脳の細胞が減るために働きが低下し、その後に脳が萎縮します。このため脳の働きをみる脳血流SPECT検査や脳の萎縮をみるCT検査、MRI検査などが行われます。

また、CT検査とMRI検査は、脳梗塞や脳出血による血管性認知症や治療ができる慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症の診断にも役立ちます。

認知症の治療ってどんなものがあるの?

中核症状の薬物療法

アルツハイマー型認知症では、記憶や学習などに関わる脳内のアセチルコリンという物質が減っていきます。脳内のアセチルコリンを増やして脳全体を活性化させるお薬には、ドネペジル(商品名アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロンパッチ)があります。さらに、病状が進行すると作用の異なるメマンチン(メマリー)というお薬を加えることがあります。

 

症状や重症度によって4種類の薬剤を使い分けます。飲み薬3種類と貼り薬が1種類です。

これらの薬は病気を根本的に治す治療薬ではありませんが、症状の進行を遅らせて日常生活能力を維持する効果があります。

中核症状の薬物療法についてのイラスト画像

BPSD(認知症の行動・心理症状)とは

認知症はさまざまな精神的な症状、行動の症状をおこします。それをBPSDと呼びます。軽症から中等症に進行するに従い頻繁に出現するようになり、本人はもちろん、介護する人にも負担がかかります。BPSDの症状が強く、介護などほかの方法ではなかなか抑えられない場合、症状に応じて薬を使うこともあります。

※BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略 

認知症で見られる症状

さまざまな症状があり、中核症状と行動・心理症状(BPSD)に分けられます。

アルツハイマーの症状について画像

BPSDの薬物療法

抗精神病薬

“幻覚”“妄想”“興奮”“不安感、焦燥感”などの症状が強い時に使います。転倒や飲み込みが悪くなることでの誤嚥性肺炎などに注意が必要で、そのため少量から慎重に使われます。

抗うつ薬

気分の落ち込み、不安感、焦燥感などのうつ症状が強い時に使われます。前頭側頭型認知症のBPSDを軽減する効果もあります。

漢方薬

“妄想”“興奮”“不眠”などに用いられます。「抑肝散」という漢方薬がよく使われます。

気分安定薬

躁うつ病の治療薬ですが、認知症の興奮や気分変動にも用いられます。

睡眠薬

睡眠確保は重要ですが、せん妄(意識障害)や転倒に注意が必要です。

薬を使わない療法

認知症の人が穏やかに自分らしく過ごせるために、薬を使わない療法がいろいろあります。そのうち、4つを紹介します。

リアリティ・オリエンテーション(RO)
  • リアリティ・オリエンテーションは、現実の時間、場所、人を適切に認識することを助けます。

具体的には、日めくりや時計をそばに置く、普段の会話の中で「今日は、3月3日。お雛様やね」「この人はヘルパーの○○さん」と、時間、場所、人を伝えるなどです。

回想法
  • 認知症があっても昔の記憶は残っています。子どもの頃、大分川で鮎釣りに興じた話、戦後復興で橋や道路をつくった苦労話など、昔語りに耳を傾けていると、認知症の人の表情が輝いてきます。
  • お手玉、洗濯板、昔の教科書などを使い、過去の体験を思い出し、語れるよう支援します。
音楽療法
  • 音楽療法は、個人や集団に対して、歌唱、楽器演奏、曲に合わせた体操などを組み合わせて行います。
  • 自然に笑顔がこぼれ、歌声が次第に大きくなり、ハツラツさを取り戻すことができます。音楽は、脳を刺激し、こころとからだを動かしてくれます。
タクティールケア
  • タクティールとは、ラテン語で「触れる」という意味です。
  • 背中、手、足などを包み込むようにゆっくりと触れることで、緊張や苦痛を和らげ、穏やかさと安心をもたらす、スウェーデン生まれのケアです。

認知症の発症リスクを下げるためにはどうしたらよいの?

認知症は誰もがなりうるものですが、運動不足の改善、糖尿病や高血圧等の生活習慣病の予防、社会参加による孤立の解消などが認知症の発症リスクを下げる可能性が示唆されています。ここでは、その中のいくつかの例をお知らせします。

発症の危険因子となるもの
生活習慣病や生活習慣
  1. 高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙は、脳血管障害だけでなく、アルツハイマー型認知症の発症にも関係すると言われています。
  2. 不活発な生活(外出することが少なく、会話もしない)

認知症の初期には、何に対しても『よだきい』というようになる方が多いようです。趣味などに興味がなくなり、活動量が少なくなることで脳の老化が加速します。

生活習慣病の予防、食習慣の改善イラスト画像
発症のリスクを下げるもの
食事
  1. 腹八分目で野菜、魚を中心としたバランスの良い食事
  2. 適量のワイン(飲み過ぎは禁物)
運動
  1. 定期的な運動
  2. 余暇活動(旅行、編み物、園芸、家族内の交流、ダンスなど)
脳の機能を高める参考例イラスト画像